規制改革会議の農業ワーキング・グループが「農業改革に関する意見」を14日にまとめた。
何から書けばよいのだろう?と戸惑ってしまうほど問題だらけであり、噴飯ものの答申である。
この問題において最も大切なのは、「農協つぶし」などと矮小化して捉えるべきではなく、
労金や全労済、生活協同組合、各共済組織も含めた、
全ての「協同組合に対する攻撃」として認識し、
その認識に沿って、全ての協同組合、そして、新自由主義を是としない全ての勢力が、危機感を持って対応すべきである。
今回の規制改革を郵政分割民営化と同じように考えるむきがあるが、それは間違っている。
あくまでも農協、県連合会、全国連、中央会等々も協同組合の民間組織であり、
国営や公社であった郵政事業とは異なる。その内部では民主的手続きが存在している。
このような民間組織を国の命令で一方的に廃止するというのは、
大手株式会社が健全経営しているのに、国がその会社をつぶしたり、
会社の内部組織を国の命令で改廃したりすることに等しい。
全農を株式会社化せよという答申もなされているが、これは大変な問題である。
言い換えれば、協同組合は経済事業をやってはならないというに等しい。
株式会社にするかどうかは、出資者である組合員が決めることで、国が強制することではない。
こんなことがまかり通れば、次には生活協同組合を株式会社にせよ、
労金を株式会社の銀行にせよ、
全労済を保険会社にせよ、
となりかねない。
まさに「協同組合の存在を認めない」という答申である。
「唇滅びれば歯寒し」との言葉もあるが、
今こそ、全国の協同組合は、これまでの経緯を超えて、小異を捨てて、団結すべき秋である。
単位農協からの信用事業分離については、噴飯ものである。
まず、その理由がどこにも書かれていない。
理由や根拠などはおそらくなく、協同組合が信用事業を行っているのが気に入らないというだけなのではないか。
漁協系統は、単位漁協の信用事業を信漁連に移管し、信用事業を分離した。
これは漁協系統金融(マリンバンク)は、全国の貯金量でも約2.5兆円と少なく、
また、単位漁協では収支、リスク管理体制ともに整備することが困難であったから、
断腸の思いで、「民間組織である漁協系統の意思」として、信用事業を分離したのだ。
組合員の利便性は低くなるなど、そのデメリットも存在し、統合後の信漁連の道のりも決して楽なものでは無かったし、今も苦闘している。
一方、単位農協は、1990年代から農協合併を行い(農協の数は合併運動前の5分の1以下にまで減少している)、
これもデメリットや悩みを生み出しつつも、少なくとも信用事業面において、リスク管理体制等で、不備がない体制を整えてきた。
組織によっては信用金庫や、漁協系統の県連である信漁連以上の貯金量・運用量を有するところもある。
総合事業体という組織形態を選び、総合事業体同士が合併することで体制を整備して来たのだ。
このように体制整備してきた単位農協が、敢えて信用事業を信農連や農林中金に統合する必要性は、少なくとも全国一律には存在しない。
また、賦課金のことを「上納金のようなもの」と敢えてマイナスなイメージの言葉で表現することにも憤りを感じる。
指導部門・営農部門・単位協同組合調整部門は、農協グループ全体の間接部門であり、そういった指導料や間接部門を賄う費用を賦課金との名称で調達しているのであり、これらはピンハネのたぐいとは異なるものである。
これまでも規制改革会議のメンバーについてはたびたび、意見を表明してきた。
規制改革会議の主張の如何は、その構成メンバーによって決まるのであり、構成メンバーに意見の偏りがあれば、客観的な結論など導き出されるはずはない。
安倍総理や新自由主義者の竹中平蔵の意を汲む結論が出されるだけである。国民全体の視点ではなく、
株主や投資家、特定企業の経営陣の立場から「有利な規制」になるように誘導する、
規制改革会議や産業力競争会議に巣食っている人たちこそ、日本の癌であり、改革されるべき対象である。
オリックスが「かんぽの宿」を安く買い叩き、高く売りぬいたような新手の利権まで、ここから発生している。
今回のような暴論が、必ず新自由主義グループから出て来るから、それに備えて「協同組合憲章」や「協同組合年における国会決議」を制定し、
アメリカを除く先進国並みに、国連の認識と同程度に、協同組合について、日本国内の位置づけをしっかりと行うべきだと、
私は現職の3年3カ月ずっと主張し、行動してきた。
協同組合振興研究議員連盟も3年掛って立ち上げ、100名を超す議員に加入いただいた。
「協同組合年における国会決議」は、実質的な与野党合意がなされた11月10日の4日後に衆議院解散となり、私は落選した。
その後、2名の自民党の国会議員(参議院議員)に後を託したが、今に至るまで国会決議は実現していない。
「自分が今、国会にいれば」と本当にもどかしく思う。
また、これほど協同組合に取り組んできた私を、選挙戦で不利になるように動いた協同組合も残念ながら存在した。
2012年、私は、当時の野田総理に対して「党を分裂させるならば、公約違反・党規約違反を行うならば、その責任をとって辞任すべき」と党分裂の重み、公約違反の重みを問うた。
今、安倍総理に向かって「TPPにおける公約違反やこのような規制改革のあり方を強行するならば、責任を取って辞任せよ」と迫れる一期生議員が、果たして自民党の中に一人でもいるだろうか。
私は、鳩山、菅、野田の三内閣において、ワーキンググループのメンバー構成や、根拠ない議論・意見について国会で質問し、WGのいわれなき批判を粉砕すべく努めてきたが、そのような動きもあまり見えてこない。
実に不甲斐無い政治状況であると言わざるを得ない。